2017年6月14日水曜日

逆行

 プロマネの栗田です。

 天体を観測していると「角度」の概念の難しさにつくづく気づかされます。多くの方が星や惑星などの天体は地球から離れたある位置、例えば「ここ」とか「そこ」にあると、考えます。もちろんそれは正しいのですが、天体は大変遠いために、位置というよりは地球から見える方向つまり角度のみが観察されます(子どものころは車窓から眺める月とビュンビュン流れる景色をみて「月がずっと追いかけてくる」と考えるものです)。
 僕自身もこの手の問題で混乱しました。正確に言うと混乱させられたと言うべきか。。その一つに惑星の「逆行」があります。これは地球より外側の軌道を回る惑星(火星や木星であり、それらを外惑星といいます)に起こる現象で、天球上を一方向に移動していたはずの惑星が突如方向転換する(ように見える)現象です。詳しくは高校の教科書やWikipediaなどで調べてください、といいたいところなのですが、こどものころから教科書に書かれている説明と図に混乱され続けてきました。
 たとえば、Wikipediaには以下のような図1と図2で説明されます。


図1 教科書にも用いられる逆行の説明図(Wikipediaより)


図2 図1の状況から導かれる天球上での外惑星の見かけの運動。(Wikipediaより) 
図1のような惑星の運動であれば、実際はこのように見えず、次の図3に示すように
A1とA4が、またA2とA5が入れ替わった状況になるはず。


 この説明方法は教科書を含め広く使われています。この図で問題なのは本当は無限の彼方にあるはずの天球が青い太線で地球に対して結構近くに描かれていることです。この天球すなわちスクリーン上での惑星の位置(A1~A5)までを見れば確かに図2の赤線のような逆行を行います。
 しかし、冒頭でもいいましたが、天体も天球も大変遠くにあって、このスクリーンの位置とは異なります。この説明図にずっと違和感を感じてました。このスクリーンの位置はどうやって決めるのだろうかと悩んでしまいます。
 たとえばこのスクリーンがうんと近くて、外惑星のすぐ外側にあったとします。するとAの点群は順番通り並び逆行なんて起きません。また図3のようにうんと遠くにスクリーンがあればA1とA4の順番が入れ替わることもわかります。いったい何が真実なのだろうか。。

      図3 天球(スクリーンを)十分遠くに置いた場合のスクリーン上での位置関係。
      内惑星から外惑星に向かった直線をこれ以上延長しても相互に交わることは無い。
      この図であれば見かけの角度の変化とスクリーン上での位置の変化が比較的対応が良い。



 つまるところ天球すなわちこのスクリーンの位置がおかしい、いやむしろ冒頭に述べたように逆光に関しては天体の「位置」なんて考えること自体が誤解を招き無意味ではないか、と気づくわけです。大切なことは地球(T)から外惑星(P)の見える方向(角度)なのです。それならスクリーンなんて必要ありませんからね。ん~、それにしてもいつまでこの図は使われ続けるのだろうか。。

 この考え方が事実や主流に逆行しているのだろうか。。



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