2015年9月30日水曜日

月より団子

制御担当の木野です。

   927日は中秋の名月でした。
ここ京都をはじめ全国的に良く晴れたようで、お月見を堪能できた方も多かったかと思います。
地球に一番近い天体でありながら、あまりに明るいために天文観測では邪魔者扱いされてばかりですが、年に一度くらいはゆっくり眺めてみるのも良いものです。
逆に、普段は天文との関わりが無い方々にとっては夜空を見上げる良い機会なのかもしれません。

   お月見といえばススキや萩、それに月見団子が欠かせません。
この月見団子、主に関東では一口サイズの白くて丸い団子をピラミッド状に積み上げたものが一般的かと思いますが、京都を含め関西では俵型の団子を小豆餡で巻いたものが供えられます。
形の由来は諸説あるようですが、里芋の形を模している説が有力なようです。
京都大学に赴任するまで知らなかったので初めて見たときは驚きました。

   私の出身地、名古屋でも餡は使いませんが団子は丸ではなく里芋の形です。
涙滴形と言うのか、端午の節句に食べるチマキを短くしたような形で、里芋の茎?につながる部分の形まで再現されています。
普通の砂糖を使った白色の団子に加え、黒糖を使ったものと食紅で色付けした3色セットで売られていました。

   他にも地方によって様々な月見団子が存在するようで、チャンスがあれば是非とも食べてみたいものです。
とは言え、お月見前の数日間しか生産されない「期間限定」モノ。
全国の月見団子を食べつくすのは至難の業なのかもしれません。


比叡山から昇る中秋の名月。
皆さんご覧になりましたか?



2015年9月17日木曜日

忙しい夏休み

広報担当の野上です。

「学校の先生は夏休みがあっていいなあ。」というような話を耳にすることがあります。しかし、知り合いの中学校、高校の先生に話を聞くと、様々な研修や部活の指導などがあり、そんなに単純な話ではないようです。

それで大学の教員はというと、やっぱりここぞとばかりに研究会、会議、実習などが増えます。もちろん自身の研究や大学院生の指導は夏休みなどありませんから、講義のある期間中とは別の忙しさがあります。

私の場合はこの夏休みで2件の国際会議に出席してきました。一つ目は8月3日から14日にハワイで開催された国際天文連合総会(International Astronomical Union General Assembly)です。総会期間中には天文学全体に関わる重要な議論(2006年には、冥王星が準惑星という分類になるというのが、ここでの喧々諤々の議論の末に決定されました)や様々な事務協議などの他に、重要な研究を推進した方の招待講演、多数の分科会・シンポジウムなどがあり、今回は世界中から3000名くらいの天文学関係者が集まったそうです。

このIAU総会では、私は前回のブログ記事を書かれた柴田さんと共に、Solar and Stellar Flares and Their Effects on Planets というシンポジウムに参加しました。柴田さんは基調講演(Plenary talk; これはシンポジウム参加者だけでなく総会全体に公開されます)を行い、私は招待講演を行いました。3.8m望遠鏡でのメインサイエンスの一つ、スーパーフレアについての講演です。

講演は気分よく始めたのですが、ここでトラブルが発生。招待講演は持ち時間が20分(発表15分+質疑応答5分が目安)で一般講演は12分(発表9分+質疑応答3分が目安)なのですが、座長の方が一般講演と勘違いしていたらしく、半分くらい話したところで、「あと2分」という座長からの指示が目に入りました!思わず「Oh, really?」かなんか言いながら、短いなあと思いつつ用意したスライドを少し飛ばしたりして一応無事終了。あとで座長の方と話してみると、勘違いを認めて、こちらが恐縮してしまうほど謝ってくれました。こういうこともあるんですね。

そんなこんなもありつつ、太陽フレアとスーパーフレアの共通点や相違点や惑星へのフレアの影響について多数の発表があり、世界的にスーパーフレア研究の重要性の認識が高まっているなあと感じるシンポジウムでした。

もう一つの国際会議は、The Golden Age of Cataclysic Variables and Related Objects IIIというもので、9月7日から12日にイタリアのシチリア島で行われました。やはり3.8m望遠鏡でのメインサイエンスの一つである「突発天体」の範疇に含まれる、激変星やX線連星に関する研究会です。今回は強磁場激変星や
新星についての面白い発表が多く、会議自体も楽しかったのですが、個人的にはそれ以外のところで2つ驚きがありました。一つが、指導している大学院生二人と参加したのですが、その一人は修士1回生で、「最も若い参加者」ということで会議の最後のセレモニーで記念品をもらったこと。もう一つが、午後のセッションがシエスタ後の午後5時から始まること。午前のセッションが12時半から1時くらいで終了し、昼食ではワインが出て、5時まではフリータイムです。昼寝をするもよし、会議場のホテルを出るもよし、ホテルが持っている海水プール(水が蒸発するからか塩分が海より濃かったです。浮力がすごい!)や海で泳ぐもよし、という、とてもイタリアンな研究会でした。(で、日程がかぶった天文学会はさぼってしまいました。)


この夏休みは他にも東京出張、北海道出張、大学院入試、1週間の集中ポケットゼミ、1週間の天体観測実習@飛騨天文台とあり、現在進行形でバタバタしています。



IAU総会で発表する筆者







2015年9月7日月曜日

天文台長の柴田です。

 2015825日(火)に、世界的な音楽家・喜多郎さんとのコラボDVD「古事記と宇宙」の発売プレスリリースおよび試写会を開催しました。その経緯やうら話を少し紹介したいと思います。
 2012521日に京都で282年ぶりの金環日食がありました。喜多郎さんとお会いしたのは、その年の27日でした。ジャーナリストの玉重佐知子さんのご紹介で、喜多郎さんを京都大学花山天文台にお招きしてご案内したのです。花山天文台の歴史的建物や日本最古の現役望遠鏡であるザートリウス望遠鏡によるリアルタイムHα太陽像などを見ながら、会話がどんどん盛り上がり、喜多郎さんは大の天文宇宙ファンであることがわかりました。そして金環日食の日に何かコラボをしましょう、ということになりました。
喜多郎さんのお名前は、NHKシルクロードの音楽の作曲家として、私も名前は聞いたことがあったのですが、シルクロードは見たことがなく、喜多郎さんの音楽は聞いたことがありませんでした。家に帰ってGoogleで検索して調べたら、何と、グラミー賞を受賞されている世界的な音楽家と知って、びっくり仰天。さらに調べると「古事記」という有名な音楽を作曲されている、「これは素晴らしい!」となったのです。
実はその年2012年は、日本神話の「古事記」ができてちょうど1300年の節目の年ということで、11月に「古事記と宇宙」というシンポジウムを、古事記のふるさとの大和郡山市で開催予定でした。私は宇宙ユニットの磯部洋明君と共に、そのシンポジウムの世話人をしていたので、シンポジウムの際に喜多郎さんをお招きして「古事記」を生演奏していただくのはちょうど良いかもしれない、と思ったのです。それで早速Amazonに喜多郎作「古事記」のCDを注文しました。3日ほどたったら送られてきて、早速、大学との行き帰りの車の中で聴き始めました。そしたら、「古事記」の音楽には感動の連続だったのです。
最初の楽章「始まり」はまさに天地開闢にふさわしい荘厳な音楽でしたし、ヤマタノオロチを表現した「おろち」はまさに怪物が暴れまわるさまを良く表現したダイナミックな音楽でした。この「おろち」を聞きながら、これは「太陽フレアだ!」と思いました。運転中の脳裏には、「おろち」の音楽に合わせてフレア爆発やプロミネンス噴出、X線で見た太陽コロナなどが「暴れまわる様子」が次々に浮かんで来るのです。それで、実際に喜多郎さんの音楽「古事記」に合わせて、太陽フレアの映像などを同時上映する企画をすれば、楽しいだろうな、それを5月の金環日食の日の日食直後に京大時計台で開催予定の日食講演会の際にやり、かつ、同じものを11月の「古事記と宇宙」シンポジウムで喜多郎さんをお招きしてやれば、一石二鳥かもしれない、というアイデアが出てきたのです。
 このアイデアを、京大総合博物館の館長をされていた大野照文先生に相談しましたら、「それはおもしろい!」とすぐに賛同してくださいました。大野先生とは、金環日食の日に、農学部グラウンドで市民の人々を集めた日食観察会の開催、および、その直後の時計台ホールでの日食講演会の開催(博物館と天文台で共催)するということで、色々ご協力いただいていた関係でした。それでさらに、喜多郎さんにもお願いしましたら、この企画と大和郡山市での生演奏もご快諾くださり、企画がスタートしました。
 こうして出来たのが、「古事記と宇宙:音楽と宇宙映像の融合の試み」です。金環日食の日に、喜多郎さんと一緒に金環日食を楽しんだあと、京都大学時計台ホールで喜多郎さん作の楽曲「古事記」に合わせて、宇宙の映像や写真を同時上映する試みをしたのです。
このときはしろうと作りの編集でしたので、その後、磯部君のアイデアで、(学内共同研究として)京都大学学術情報メディアセンターの元木環さん、岩倉正司さん、花山天文台の西田圭佑さんの助けを得ることができるようになり、編集を本格的にやり直した結果、すばらしいコンテンツが出来ました。201211月に、古事記のふるさと大和郡山市で開かれた「古事記と宇宙」シンポジウムでは、喜多郎さんの生演奏に続く形で、本コンテンツを上映しました。その内容を基本にして多少の編集改訂を行い、最後の「黎明」部分については国際版へ大幅改訂してできたのが、このほど発売になったDVD「古事記と宇宙」です。 
 DVDの内容は、
1. 「太始 Hajimari(5:33) 宇宙初期の大規模構造形成と銀河形成シミュレーション
2. 「創造 Sozo(3:39) 太陽系内の惑星と衛星
3. 「恋慕 Koi(6:31) 天の川、星団、星雲、銀河
4. 「大蛇 Orochi(7:07) 太陽フレア、プロミネンス噴出、X線で見たコロナ
5. 「嘆 Nageki(5:48) オーロラ
6. 「饗宴 Matsuri(9:01) 日食、コロナ、プロミネンス、彩層
7. 「黎明 Reimei(8:43) 世界の宇宙学の歴史と未来
というもので、全編鑑賞すると天文学入門になるように、映像や画像が選ばれています。
 私は3年前から、「大蛇(おろち)」や「恋慕」を、小学校の出前授業や市民講演会で活用しています。音楽なしの映像・画像紹介よりずっと聴衆の方々は楽しんでくれます。それどころか、最近は国際会議でも活用しています。つい先日(810日)、国際天文学連合総会がハワイで開催されたとき、「太陽フレアと恒星フレア」のシンポジウムの plenary talk を頼まれたのですが、講演時間が1時間以上ありましたので、途中で息抜きのため「おろち」(7分間)を上映しました。上映が終わった直後に、Did you enjoy ? と聞きましたら、講演途中なのに拍手喝采となって、びっくり。感動の瞬間でした。
 なお、発売元のDIAAからも以下のプレスリリースが出ており、多数購入希望の方は、そこに直接連絡されることをおすすめします。1セットであれば、アマゾンか、京大博物館、京大生協のショップで購入可能です。
 
PS: 10月24日には、喜多郎さんを再びお招きして、第3回花山天文台野外コンサート「月と音の夕べ」が開催されます。ふるってご参加ください。



DVD「古事記と宇宙」(定価3800円(税抜き))とともに、
柴田と喜多郎さん
2015825日、記者発表の際、京大イノベーション棟5階にて)